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精神障がい者保健福祉手帳(精神障がい者手帳)とは?等級による違い やメリットと デメリットを解説
公開日:2024/07/19
更新日:2024/10/18
「障がい者手帳ってどうやって取得するの?」
「手帳を持つとどんなメリットがあるの?」
ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)などの発達障がい(神経発達症)のある方が障がい者手帳の取得を検討する際、このような疑問で踏み出せないケースが多いのではないでしょうか。
障がい者手帳を持っていることで受けられる支援やサービスは多岐にわたり、地域や自治体によっても異なります。
本記事では、発達障がいのある方が取得できる手帳の種類、取得方法、メリットやデメリットなどを解説します。ぜひ参考にしてください。
目次
発達障がい(ADHD等)のある方が取得できる障がい者手帳の種類
障がい者手帳は、大きく分けて3つの種類があります。
- ・精神障がい者保健福祉手帳
- ・療育手帳
- ・身体障がい者手帳
この中で、ADHDなど発達障がいのある方が取得できる手帳は「精神障がい者保健福祉手帳」です。
発達障がいのほか、知的障がい(知的発達症)のある方は「療育手帳」を取得することができます。手帳を所持すると、生活や就労に役立つ多くのサポートが受けられます。
ここからは、発達障がいのある方が取得できる障がい者手帳の概要をそれぞれ解説します。手帳の取得を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
精神障がい者保健福祉手帳
精神障がい者保健福祉手帳は、一定程度の精神障がいのある方は取得可能です。等級は1級から3級まであり、障がいの程度に応じて分類されます。
他人の援助を受けなければ社会生活を送るのが困難な状態は1級、1級の項目を必ず援助を受ける必要はないものの自立して生活を送れない場合は2級、日常生活又は社会生活に制限を受ける方は3級となります。手帳取得後は、2年ごとの更新手続きが必要です。
対象となる精神障がいは以下の通りです。
- ・統合失調症
- ・気分障がい(うつ病、躁うつ病等)
- ・てんかん
- ・高次脳機能障がい
- ・発達障がい(ADHD、自閉症、学習障がい等)
- ・その他の精神障がい
参照:国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所「障害者手帳・障害年金」
参照:厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」
療育手帳
療育手帳は、知的障がい(知的発達症)のある方が取得できる手帳です。自治体によって「愛の手帳」「みどりの手帳」などと名称が異なることもあります。
児童相談所や知的障がい者更生相談所から「知的障がいがある」と判定された方が対象となります。また、発達障がいと同時に知的障がいのある方も対象とする自治体もあります。
療育手帳にはA・Bの2種類の区分があり、知的障がいの程度に応じて分類されますが、地域の自治体によって判定は異なります。申請に必要な書類も自治体によって異なるため、必ずお住まいの自治体に確認しましょう。
発達障がいのある方に聞いた障がい者手帳に関するアンケート調査
発達障がいのある方の何割の方が障がい者手帳を持っているのか、また実際にどんな支援サービスを受けているのか、気になる方も多いでしょう。
今回は、発達障がいのある方を対象にアンケート調査を行い、以下の4つの質問に答えていただきました。
【アンケート概要】
調査時期:2024年5月27日~2024年6月6日
回答数:53件
調査手法:インターネット調査
調査対象:発達障がいのある方
調査実施:インターネットリサーチ会社
障がい者手帳を持っていますか
発達障がいのある方からアンケート回答をいただいた結果、6割以上の方が障がい者手帳を持っていることが分かりました。
また、手帳を持っていないと答えた約4割のうち1割以上の方は「制度を知っているが手帳を持っていない」と回答しており、「以前は持っていたが返還した」という方も見受けられました。
今回の結果から、発達障がいのある方の半数以上が障がい者手帳を取得している一方で、制度を知りつつも取得していない方も一定数いることが分かります。
障がい者手帳を持っている方への質問:障がい者手帳の種類は何ですか
発達障がいのある方が持っている障がい者手帳の種類は、約8割が精神障がい者保健福祉手帳でした。また、なかには身体障がい者手帳を持っている方、療育手帳を持っている方もいます。
今回のアンケートでは、発達障がいのある方のうち半数以上の方が障がい者手帳を取得していました。手帳の種類や等級、地域によって受けられるサービスや支援が異なる場合があるため、お住まいの自治体で確認するとよいでしょう。
障がい者手帳を持っている方への質問:どんな支援やサービスを受けていますか
以下は、障がい者手帳を持っている方が実際に受けている支援やサービスとして、多く寄せられた声です。
- ・公共交通機関の割引(バスや新幹線、タクシーなど)
- ・医療費の助成(診察、処方箋、内服薬など)
- ・公共施設の割引(博物館、美術館、映画館など)
- ・税金の減免(所得税、住民税、自動車税など)
- ・携帯料金の割引
- ・福祉用具費用の助成
- ・その他(ETC割引と自動車税の免除など)
支援やサービスを利用すると生活費や税金が軽減されますが、特に医療費の助成や公共交通機関の割引は障がいのある方の大きな支えとなっています。
障がい者手帳を持っていない方への質問:手帳を持っていない理由は何ですか
以下は、障がい者手帳を持っていない理由として挙げられていた声です。
- ・手続きが面倒
- ・軽度のため申請しても通らないと言われた
- ・手帳の必要性を感じていない
- ・自分を障がい者と認めることに抵抗がある
- ・障がい者として登録されることに抵抗がある
- ・支援を必要としていない
- ・生活に支障がないため
手続きの煩雑さや支援を必要と感じていないこと、障がい者として認めることへの抵抗感などから手帳を取得していないことが分かります。
発達障がい(ADHD等)のある方が障がい者手帳を取得する方法
発達障がいのある方は手帳の申請を行う前に「精神障がい者保健福祉手帳」と「療育手帳」のどちらを取得できるのか、理解しておくことが大切です。
手帳を取得するためには、医師の診断書をはじめとする申請に必要な書類を用意し、指定された窓口で手続きを行う必要があります。自分に適した手帳を取得すれば、生活を支える多くの福祉サービスを受けることが可能になります。
それでは「精神障がい者保健福祉手帳」と「療育手帳」の取得方法を見ていきましょう。
発達障がい(ADHD等)の方が「精神障がい者保健福祉手帳」を取得する方法
精神障がい者保健福祉手帳の取得は、市区町村の担当窓口で申請を行います。本人が窓口まで行けない場合、家族や医療機関関係者による代理申請も可能です。
申請には本人の写真、申請書、主治医の診断書(初診から6カ月以上経過したもの)などの書類を用意する必要があります。
手帳を取得すると、公共料金の割引、所得税や住民税の控除、公共交通機関の料金割引など、様々な福祉サービスを受けることができます。
参照:東京都「【医療機関の皆様へ】精神障害者保健福祉手帳の診断書作成」
発達障がい(ADHD等)の方が「療育手帳」を取得する方法
療育手帳の運用は各自治体によって異なるものの、申請までの流れは同じです。発達障がいのある方が療育手帳を取得するには、18歳未満なら児童相談所、18歳以上の場合は心身障がい者福祉センターに申し込みをして判定を受ける必要があります。
申請には、印鑑、本人確認書類、本人の写真、親子健康手帳(母子手帳)、診断書などが必要です。ただし、申請に必要な書類は自治体によって異なるため、必ず事前に確認しましょう。
療育手帳を取得すると、公共料金や税金の減免、公共交通機関の料金割引、一部駐車場の料金割引など、多くの福祉サービスを受けることができます。
発達障がい(ADHD等)の方で障がい者手帳がもらえない場合もある
精神障障がい者保健福祉手帳の申請には、主に2つの条件があります。まず、主治医から診断書を発行してもらうこと、そして精神障がいの初診日から6カ月以上経過している必要があります。
もし条件を満たしていない場合は、精神障がい者保健福祉手帳がもらえません。
医師の診断書は必須書類であるため、病院で診断を受けていない方は申請することができません。また、初診日から6カ月未満の方も条件を満たしていないため、診断書を提出しても申請は通らないでしょう。
発達障がい(ADHD等)の方が障がい者手帳を取得するメリット・デメリット
ここまで、障がい者手帳の種類別に取得方法や受けられるサービスを見てきました。では、そもそもの障がい者手帳を取得するメリット・デメリット、取得するにあたって留意すべき点などあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
発達障がい(ADHD等)の方が障がい者手帳を取得するメリット
障がい者手帳を提示することで、障がい者雇用枠での就労が可能になるほか、医療費負担の低減や税金の控除、料金の割引といったサービスを受けることができます。
- 【例】
- ・就職時に障がい者雇用枠で応募できる
- ・医療費の助成や税金の減免などが受けられる
- ・公共交通機関や施設利用など料金の割引がある
発達障がい(ADHD等)の方が障がい者手帳を取得するデメリット
障がい者手帳を取得するデメリットは、特にないといえます。手帳を取得しても利用するかどうかは本人の自由であり、手帳を取得していることを開示する義務もありません。「支援が必要となったときのために取得しておく」という考え方でもよいでしょう。
しかし、障がい者手帳の取得により「障がい者」と認定されることに抵抗を感じる方もいるため、必要がなければ手帳を取得しないという選択肢もあります。
関連記事:精神障がい者(精神障がい者手帳)保健福祉手帳を持つメリットとデメリット|等級による違い
発達障がい(ADHD等)があっても障がい者手帳の取得は自由
障がい者手帳は、障がいがあると診断されたからといって、絶対に取得が必要だというものではありません。各手帳の詳細を確認した上で、特にメリットがないと思えば取得しなくてもよいものです。
また、取得したとしても手帳を利用するかどうかは自由であり、いつでも返還可能なためご安心ください。
発達障がい(ADHD等)の方も利用できる! 就職の「障がい者雇用枠」
近年、国は障がいのある方が職業を通じ、誇りを持って自立した生活を送ることができるよう、障がい者雇用対策を進めています。対策の一環として設けられた「障がい者雇用枠」に関して、詳しく見ていきましょう。
「障がい者雇用枠」で就職するメリットとデメリット
障がい者雇用枠で就職するメリット・デメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
障がい者雇用枠、一般雇用枠どちらにしても、自分の特性を理解して適材適所で働くことで、ADHDなどの発達障がいのある方も能力を発揮して就労できる可能性があります。
【障がい者雇用枠で就職するメリット】
障がい者雇用枠で就職するメリットは、自身の障がいについて、あらかじめ会社へ伝えた上で就職するため、会社側が障がいに関して配慮してくれたり、困りごとを会社側に相談しやすくなったりすることです。
一般雇用枠で就職したものの「困りごとが多くつらい」という場合には、障がい者雇用枠へ変更することも検討してみましょう。
【障がい者雇用枠で就職するデメリット】
一方、障がい者雇用枠での就職のデメリットは、一般雇用枠と比較して求人が少ないことや「非正規雇用」や「時短労働」といった要因によって給与水準が低いことが挙げられます。また、職場の人に「障がい者」として認識されることにストレスを感じる方もいるかもしれません。
発達障がい(ADHD等)の特性を活かした仕事を探そう
ADHDなどの発達障がいの特性を活かせる仕事もあります。また、支援を受けるというのも選択肢の1つです。それぞれ詳しく解説します。
発達障がい(ADHD等)の特性を活かせる可能性がある仕事の一例
ここでは、「不注意」と「多動性・衝動性」の2つの特性別に向いている可能性がある仕事をご紹介します。
- 【不注意の特性がある方に向いている可能性がある仕事】
- ・デザイナー
- ・イラストレーター
- ・コピーライター など
不注意の特性は、「興味のないことには集中を向けることが苦手」、逆に考えれば「興味のあることには集中できる」ともいえます。
また、他のことに目移りしやすいため、独創性のあるアイデアをひらめいたりすることもあるでしょう。興味のある分野の作家などの仕事が向いている可能性があります。
- 【多動性・衝動性の特性がある方に向いている可能性がある仕事】
- ・営業職
- ・接客業
- ・イベントプランナー など
「じっとしていられない」ということは、行動力がありエネルギーにあふれているともいえます。軽いフットワークが求められる仕事を探してみましょう。
障がいを短所ととらえるのではなく「特性」と考え理解することで、自分の能力を発揮できる仕事を探してみましょう。
支援を受けるという選択肢もある
就労の場面に限らず、ADHDなどの発達障がいの症状や生活に関する悩みを一人で抱え込みすぎることはよくありません。困りごとの解決が困難な場合には、以下のような機関へ相談したり支援を受けたりすることも検討してみましょう。
- ・発達障がい者支援センター
- ・障がい者就業・生活支援センター
- ・ハローワーク
- ・精神保健福祉センター
- ・ココルポートなどの「就労移行支援」を行う事業所
関連記事:発達障がいの方に向いている仕事をADHD、ASD、LDの特性別に徹底解説
「ADHDなどの発達障がい」「障がい者手帳」に関する不明点はココルポートにご相談ください
ADHDなどの発達障がいのある方が取得できる「精神障がい者保健福祉手帳」「療育手帳」の取得方法や取得によるメリット・デメリットなどをご紹介しました。
障がい者手帳は必ずしも取得しなければいけないものではなく、ご本人のニーズと合致すれば取得するという考え方で問題ありません。
障がい者手帳に関して分からないことや悩みがあるときは、医師や自治体、支援機関に気軽に相談しましょう。
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