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知的障がいのある方に向いている仕事を「軽度・中度・重度」ごとに解説
公開日:2022/06/14
更新日:2024/04/25
知的障がいのある方の中には、仕事をすることができるのか、長く続けられるのか、といった不安があるかもしれません。
しかし、知的障がいの特性を理解し上手に付き合うことができれば、自身に合った仕事を見つけ、仕事を続けていくことも可能です。
この記事では、知的障がいのある方の具体的な働き方や頼れる社会資源について解説していきます。
※いわゆる「知的障がい」という表記は、近年の世界保健機関(WHO)や米国精神医学会(APA)などの診断基準の改訂に伴い、「知的発達症」「知的能力障がい」という表記へ移行しつつあります。
ここでは、比較的なじみのある「知的障がい」という表記で話を進めます。
目次
知的障がいの特徴と分類について
知的障がいとは、発達期(一般的には18歳まで)の知的発達に遅れがあり、同じ年齢の平均よりも全般的な知的機能が低く、日常生活でさまざまな状況へ適応する能力に明らかな制限がある状態を指します。
従来は「知能指数(IQ)」を主な基準として障がいについて判断されていましたが、近年ではIQよりも「適応機能」、つまり、読み書き、食事の準備や金銭管理、対人関係や集団の中でルールを守ることなど、日常生活や社会生活を送るための能力を重視して判断(診断)されるようになっています。
米国精神医学会の基準(DSM-5)では知的障がいは4つの段階に分類されており、以下でそれぞれ解説していきます。
参照:e-ヘルスネット「知的障害(精神遅滞)」
軽度
基本的な生活習慣や身の回りのことなどは自分で行うことができ、ある程度の年齢まで障がいに気づかれないこともあります。
しかし、読み書き計算や、おおよその特徴を捉えて把握する能力である抽象的思考などいくつかの学習技能の習得が難しく、社会に出た時の対人コミュニケーションがうまくいかなかったり、スケジュールを計画したりすることが苦手であるといったケースがみられます。
中等度
時間をかけた指導など適切な支援があれば、家事や身の回りのことをある程度行える場合もあります。
通常、読み書き計算などの学習技能は初等教育(小学校くらい)程度で、コミュニケーションや意思決定、判断能力は限られており、周囲の支援が必要となります。
言葉や運動能力の発達にも遅れがみられることがあり、世の中の言わずとも通用している、いわゆる暗黙のルールや空気を読むことが苦手なケースもみられます。
重度
1人では身の回りのことや食事・入浴などを行うことが難しく、日常生活においても支援が必要となる場合が多いです。
生活における身の回りのことを、周りの協力によってこなしていきます。
言語や運動能力の発達が遅く、書かれた言葉や数、時間の単位やお金の数え方などを理解することが苦手です。
最重度
自分の身の回りのこと、健康、安全を守ることなど、日常生活のすべての面において、周りからの支援を必要とします。
とても限られた範囲で、身振りや絵、またはカードなどを使ったコミュニケーション手段を用いることで、意思疎通を行うことが可能なケースもあります。
知的障がいのある方が抱える仕事の悩みについて
知的障がいといっても個性や苦手分野は人それぞれで異なるため、自分の特性をよく理解することが大切です。
以下では、知的障がいのある方が抱えやすい仕事上の悩みとその対処方法や工夫について紹介していきます。
想像していた業務内容と違った
自分の得意・不得意やこだわりを把握しないまま仕事を選んだ場合には、いざ仕事をやってみた時に「実は不得意だった」と感じ、長く続けられない場合があります。
そのため、自分に合った仕事なのか事前に情報を集めたり、可能であれば職場見学に行ったりしながら、ミスマッチのないように就職活動を行うことが大切です。
また、自身の障がいや特性について職場で情報共有を行い、周囲の方の負担が大きくならない範囲で支援してもらうこと、いわゆる「合理的配慮」を話し合うことも重要です。
働く上でのルールやマナーがわからない
知的障がいのある方は、集団のルールを守ることや、集団の中での自分の役割を認識することが苦手な場合があります。
そのため、社会人としてのルールやマナーなどを研修で指導してもらったり、定着支援などのサービスを活用して、支援スタッフと一緒に職場での暗黙のルールを考えたりしながら身につけていくことが大切です。
報告・連絡・相談(ほうれんそう)が苦手
困った時の課題の解決方法を自分で考えることが難しく、注意される理由が分からずに悩んでしまう、ということも多いのではないでしょうか。
知的障がいのある方は、「報告・連絡・相談」を苦手とすることが多い傾向にあります。
定期的に仕事の進み具合を見てもらうようお願いをするなど、工夫することも大切です。
「困ってから」ではなく「普段から」報告したり相談したりすることで、周りの助けを受けやすくなることは多いです。
仕事がなかなか覚えられない
知的障がいのある方は、他の人より仕事を覚えるのに時間がかかる場合があります。
仕事のやり方をメモして机などに貼ることや、絵や写真にして理解しやすくするなどの工夫をするとよいでしょう。
また、同時に複数の指示を受けると混乱してしまうこともあるので、一つずつ指示をもらうことが重要です。
スケジュールの管理が難しい
知的障がいのある方は程度が重くなるほど、時間の感覚を身につける、計画的に行動するということが難しくなる傾向にあります。
個人差はありますが、自らスケジュールを組んで管理することを苦手とする方は多く、どれくらいの量の仕事がどれくらいの時間でできるかなどの見通しを立てることが苦手です。
このような時は、紙などに書かれた計画・予定表があれば理解できることもあれば、周囲の同僚が声かけをしてくれるなどのサポートがあればスムーズに進められることもあります。
知的障がいのある方に向いている仕事内容
続いて、知的障がいの程度に応じて向いている仕事をご紹介します。
軽度の方に向いている仕事
軽度知的障がいの場合、同じ「軽度」であってもその人の個性や得意なこと・苦手なことは人それぞれです。
たとえば、変化が苦手な方は同じ作業を繰り返すような仕事内容のものや、人の入れ替わりやルール変更が少ない職場環境を選ぶことが大切です。
軽度知的障がいの方は、下記のような業種で働いているケースが多いです。
- ・工場などの「製造業・加工業」
- ・お店の裏方で、棚卸しや在庫管理をする「卸売・小売業」
- ・公共の場やオフィスビルを掃除する「清掃業」
中度の方に向いている仕事
中度知的障がいの方も、同じ「中度」であっても、得意なことや苦手なことは人それぞれです。軽度の方と同様に、「製造業・加工業」などのルーティンワークが多い職場で働いている方は多くいます。
自分に合った働き方を見つけていくことが大切です。
重度・最重度の方に向いている仕事
就労が可能な重度・最重度の知的障がいの方の多くは、作業所で個々の特徴に合わせた仕事をしています。
また、「就労継続支援事業所で働く」といった働き方もあります。
就労継続支援事業所とは、すぐに一般企業に就職するのが不安な方や、訓練を受けつつ就労の準備をしたい方が、生活指導員や職業指導員といった支援のプロの方々からアドバイスをもらいながら実践的な仕事を経験できる場のことです。
知的障がいのある方の雇用形態と給料
厚生労働省の調査によると、知的障がいのある人が最も多く従事している産業は製造業で、続いて卸売業・小売業、医療・福祉、サービス業の順に多くなっています。
厚生労働省が平成30(2018)年6月に実施した「平成30年度障害者雇用実態調査」によると、従業員規模5人以上の事業所に雇用されている知的障がい者は18万9,000人であり、障がいの等級別にみると、重度が17.5%、重度以外が74.3%となっています。
職業別では生産工程の職業に就いている人の割合が37.8%と最も多くなっています。
なお、知的障がいのある人の平均勤続年数は7年5カ月、平成30年5月の平均賃金は11万7,000円となっています。
仕事を選ぶ基準として重要なのは、働くモチベーションを維持し続けることのできる仕事であるかという点です。
そのためには好きな仕事であると同時に、仕事内容や職場環境が自分のスキルや状態に合っていることも大切になります。
参照:厚生労働省「平成30年度障害者雇用実態調査の結果
知的障がいのある方の3つの働き方
知的障がいのある方の働き方(雇用形態)として、企業などでの一般就労(オープン、クローズ)、企業での障がい者雇用枠での就労、福祉的就労(就労継続支援A型・B型)の3つの働き方があります。
それぞれの特徴を解説していきます。
企業などでの一般就労|一般枠
一般就労とは、障がいのない方と同様の条件で働くことです。
軽度知的障がいの方の場合、障がいの程度によっては「障がいがある」と周囲に気づかれないことも多く、障がいを周りの人に知らせずに企業などへ就職して働くパターンも考えられます。
一般就労のメリットは、職種や待遇などの選択肢が多く、昇進や昇給の機会にも恵まれる場合が多いことです。
しかし、障がいのあることをあらかじめ伝えないクローズ就労の場合には、体調や得意・不得意への配慮については、あまり期待できない状況も考えられるので、注意が必要です。
自身の障がいについて説明した後に働くオープン就労の場合には、周囲への説明が必要ですが、障がいへの配慮をしてくれる場合があり働きやすいでしょう。
障がい者雇用
障がい者雇用 は、療育手帳などの障がい者手帳を持つ方が働くことができる企業の雇用枠 です。
障がい特性を理解した上で雇用されるため、体調や特性に応じた相談がしやすく、体調不良の際に無理せず休めるなど、配慮を得やすい傾向にあります。
業務内容も、障がいに配慮した内容になっていて適応しやすく、障がいに対する配慮がある環境はメリットといえます。
しかし、募集のある職種が限られていることがあり、一般就労と比べると給料が低くなる場合があります。
福祉的就労|就労継続支援A型・B型
障がい者総合支援法が定める就労支援サービスの1つで、一般企業や社会福祉法人などが運営する「就労継続支援事業所」で働きます。
就労継続支援A型と就労継続支援B型の2つがあり、A型は事業所に雇われる形態、B型は雇用上の契約を結ばずに働く形態です。
A型事業所は賃金、B型事業所は工賃という形で報酬が支払われます。
メリットとしては、すぐに一般企業で働くことに高いハードルを感じる方や訓練を受けながら就労の準備をしたい方が、生活支援員や職業指導員といった支援のプロの方々からアドバイスをもらいながら実践的な仕事ができることがあげられます。
参照:厚生労働省「障害者総合支援法における就労系障害福祉サービス」
知的障がいのある方が仕事をする上で活用できる制度
知的障がいのある方が仕事を探す時に活用できる支援機関について解説します。
ハローワーク
ハローワークは厚生労働省によって各都道府県に設置されています。
公共機関であり、就職したいと思った時に無料でサポートを受けることができます。
障がいのある方を支援するための窓口があり、仕事に関する相談やカウンセリングの実施のほか、障がいや疾患のある方を対象にした求人の紹介などを行っています。
地域障がい者職業センター
地域障がい者職業センターは各都道府県に設置されており、ハローワークや企業、医療や福祉施設などと連携して、障がいや難病のある人の就職活動のサポートなどを行う機関です。
また、地域障がい者職業センターの専門職員として厚生労働省の定める研修・試験を修了した障がい者職業カウンセラーがいるほか、リワークアシスタント、ジョブコーチ等が配置されています。
身体障がい者手帳、精神障がい者保健福祉手帳、療育手帳を持つ方、難病のある方、その他障がいがあると認められる方(診断書のある方、障がい者手帳申請中の方を含みます)が支援対象となります。
障がい者就業・生活支援センター
障がい者就業・生活支援センターは、障がいのある方の身近な地域において、就業面と生活面の一体的な相談・支援を行う機関です。
また、生活に不安があり仕事に就くことが難しい方に対して、健康管理やお金の管理などの生活基盤を支える「生活支援」を実施しています。
ジョブコーチ(職場適応援助者)
ジョブコーチは、支援機関から職場に派遣されて、障がいのある方が就労後、円滑に仕事をしていくために支援を行う専門家です。
障がいのある方やその家族の相談にのったり、上司や同僚に助言をすることで職場環境を整えたりします。
また、職場内で障がい者への理解を深める活動なども行います。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所とは、障がいや疾患のある方の就労に必要な訓練などを行い、一般企業への求職から就職までの一連の過程をサポートする事業所です。
「職業訓練の提供」と「就職活動の支援」などを行い、履歴書作成や面接対策などの就職活動のサポート、就職後の定着支援などを受けることができます。
また、知的障がいの特性や本人が抱える悩みをよく理解した上で、働きやすい職場を探すお手伝いをしてくれます。
仕事探しは、相談できる支援制度をうまく活用しよう
知的障がいのある方が仕事を継続するためには、知的障がいの特性とそれに伴う自身の状態をよく理解し、必要に応じて周囲のサポートを受けながら上手に付き合っていくことが大切です。
就労移行支援事業所である「ココルポート」は、知的障がいのある方が就労や自立に向けてさまざまなスキルを身につけながら自分と向き合うことをサポートしています。
ココルポートの大きな特徴は「個別支援」に力を入れていることです。
ひとりひとりの体調・悩み・希望を支援員と相談できる体制を整えており、就労へ向けたスキルはもちろん、セルフケアを身につけるサポートなど、さまざまな側面から就労の準備を一緒に整えていきます。
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