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就職事例紹介
20代男性(広汎性発達障がい)の就職事例
あきらめやすく怒りやすかった私が、業務提案するまでになった
通所期間1年10ヶ月20代男性(広汎性発達障がい)の就職事例
あきらめやすく怒りやすかった以前の私。同じようにあきらめやすい誰かの気持ちを少しでも変えるような進言ができたら嬉しいです。
私は最初、障がい福祉センターで数日間の職業訓練をしていたのですが、そこでココルポートのことを紹介してもらいました。行ってみたらちょうど他の方々が訓練している様子も見ることができ、丁寧な説明もありましたので、すぐに通所を決心しました。その時の私には新たな場所へ踏み出す怖さより、ここで自分のできることを探せなかったらどうしようという焦りのほうが大きく、迷いはありませんでした。
最初は週3日から通い始めました。訓練とはいってもまずはイメージからが大事だと思ったので、私は本当に職場に通う感覚、本物の仕事だという気持ちで取組んでいました。そうしたら、しばらくしてドッと疲れが来てしまいました。スタッフからのアドバイスもあったと思いますが耳に入っておらず、視野が狭くなっていて、とにかく目の前のこと一つひとつに全力で、たとえ訓練であっても本気で取り組まなければ、と気を張りつめ過ぎたのが一番の原因でした。それでは続かないと今はわかります。
最初はそんな調子の私でしたが、通い続けるうちにリズムをつかみ、様々なプログラムで学んでいくことで疲れなくなりました。また、その頃の私は現在のように流暢に人と会話をしたりコミュニケーションをとることができなかったのですが、プログラムで得たスキルで随分変わりました。それまでの私は人間関係で気持ちが荒れ、自分からは発信せずにため込むことが多かったのです。そして訓練を重ねることで、自分から発信するだけでなく、何かしらの提案なども出せるようになっていきました。それが今の職場でとても役立っています。なかなか自分のチームメンバーに気をまわし切れず、まだまだ自分も変わるべき所があるなと感じていますが、それでも、その人にどう進言したらいいか、そんなふうに考えるようになったこと自体、以前の私では思いもよらない大きな変化でした。
「ネガティブに考える癖があるなら、逆方向に変換する癖を発生させればいい」そんな考えが、ある日唐突に浮かんだ
どうして私が発信や提案ができるまでに変われたのか。それまでは自分の中に負の連鎖があり、一度そこに直結してしまうと、ずっとネガティブなことばかりで頭がいっぱいになっていました。でもある時、「だったらそこから逆のことを考えればいいんじゃないか」と唐突に思い浮かんだのです。つまりネガティブに考える癖ができているなら、逆方向に考える癖を発生させればいいのだと。そう考えてからプログラムで人への話しかけ方、頼み方などを学ぶと、そこから提案の出し方が自分の中でイメージできるようになり、そのイメージでコミュニケーションし始めると、そこからネガティブを切り離す方法も生まれていきました。それまでとは全く逆の連鎖が起こったのです。自分でも自分のそんな変化に驚きました。何故そんな考えが唐突に浮かんだのか、今でも不思議ですし驚きです(笑)。
今度こそ少しでも役に立ちたい。その一心で仕事への覚悟を決めた
就職活動を始めた時は、自分にできるか、周りの人にどう思われるか、自分の腕でどこまで役に立てるのかと、様々な気持ちが複雑に入り混じっていました。通所当初の自信のなさは、人の役に立たなかったから仲間に入れなかったという、それまでの経験から来ているものだと自分でわかっていたので、同じことにならないよう、今度こそ少しでも動けるようになりたい、役に立てるようになりたい、という気持ちが私の中に強くありました。実習を重ね、改めて面接で仕事することについて聞かれた時、「少しでも自分が役に立てるなら力を尽くしたい」と伝え、その仕事への覚悟を決めました。弟に「変なところで覚悟を決めるね」と引かれましたし、決心の仕方は人それぞれ、決して焦らないほうがいいとは思いますが、当時の私は、少しでもためらったらまた止まってしまうという思いがありましたし、選択肢を多くし過ぎて自分で自分を困らせる悪い癖があることを自己理解していましたので、決断してよかったと思っています。その後は私も、仕事をする中で少し考えてみてから決めてみようと思うようになり、落ち着いてその場の状況を見て判断できるようになりました。例えば自分やチームメンバーの動きを見てちょっと無理しているなと感じたら、「他の作業で少し気を落ち着けてみましょうか」と皆に進言できるようになっています。これもあの頃の私からは想像もできない変化です。
仕事は週4日朝から夕方まで、特別介護老人ホームで床やトイレ清掃が主な担当ですが、今は新しい仕事を任されることも多くなり、ご利用者さんの部屋のエアコンフィルター掃除や車椅子の掃除などもしています。人が足りない時は洗濯も手伝うなど業務は多岐に渡り、本当に体力勝負です。チームで働いてはいますが、基本は自分の仕事は自分が責任もって仕上げなければなりません。確かに大変ですし疲れますが、限られた人手でどこまでやれるかという小さなチャレンジ精神をモチベーションに、自分にできるところまで力を発揮することに集中します。あとはその日の作業を終えたのちに少し目を閉じて軽く休んだり、趣味の鉛筆画を描いたりして気持ちを切り替えます。
コミュニケーションができなかった私が、今では職場で提案するまでになった
ココルポートで訓練したことはとても役に立っています。コミュニケーション能力が全くなかった私が、職場で提案までできるようになったのです。今も自分が伸びているのが実感としてあります。そうでなかったらこうした取材で流暢に話すことなどできなかったですし、取材すら引き受けていなかったと思います。過酷な状況下にあった私にとっては、まずは精神的な成長を遂げたいという思いがあり、就職についての具体的なことは一切頭にない状態でした。そんな中ココルポートで訓練していくうち、少しずつコミュニケーションができるようになったと実感し、更に提案や進言もできるようになり、壁にぶつかりながらも4年間仕事を続けています。ココルポートではコミュニケーション系のプログラムに積極的に参加しましたが、他の方がパソコン訓練で困っていらっしゃるのを見て、お節介かなと思いつつも、データ保存の方法やPCのコマンドリストを作って発信するなどしました。そしてある時、Officeの給茶機清掃を担当していた方が卒業するにあたり、後継者として私に話が来て、スタッフの推薦もあり担当することになりました。給茶機の他にコピー機、電子レンジ、冷蔵庫なども担当し、1日の中で時間を決めてちょっとした汚れを落としたり、メンテナンスしていました。それを続けるうち細かい所にも目が行き届くようになり、清掃という仕事に対しての自信がついていきました。その経験がその後の就職に繋がっていくとは、その時は思いもしませんでしたが、今考えると本当にやってよかったなと思います。場所やものを綺麗にする仕事は、毎日人に使われるから毎日手入れするのは当然、という感覚で、私としてはいいなと思っています。新しい業務を教わる時も、教わることや知らないことは恥ではなく、教わったあとで大きなミスをすることこそが恥だと考えています。今は新しく入ったスタッフに私が仕事を教えることもありますが、その考え方は大切にしたいと思っています。
“自分の仕事をやりきっている”という充実感の積み重ねが自信に繋がっている
仕事に対しては、楽しさ少々とやりがいが半分、あとは“やりきれている”という気持ちが大きいです。限られたメンバーで最大限の力を発揮するには、自分の仕事は責任もってやりきらないと、と思っています。最後までちゃんとやり通そうとする気持ち、そうした気持ちがないと仕事はやっていけないと思うのです。予定にない仕事が急に来てパニックになったこともありましたが、その時の、やりきれるかという不安な気持ちの状態から、経験を積んだ今は少しの楽しさとやりきっているという自信と充実感を持てるまでになっている。割り振られた業務を一つひとつやりきることを積み重ねて、今の私に至っています。
もし就職へ向けてスタートしたいけれど不安で動き出せない方がいたら、一度ココルポートを見学することから始めてみることをお勧めします。コミュニケーションに自信のない方でも、スタッフのサポートとプログラムで少しずつ慣れていけるのはもちろんですが、実はそのコミュニケーションプログラムに“自分から”向かっていったことこそが、私にとって第一の進歩だったと今、思うからです。それが何よりも良い経験、大きな一歩となりました。迷っているなら動いてみてほしいです。ここはきっと無理、自分には合わないと食わず嫌いするよりは、一度やってみてという気持ちです。これはあきらめかけていた自分へのメッセージでもあります。こんな自分になれるなんて、私も思ってもみませんでしたし、動かなければ何も開いていかないと思うのです。どんな目標であっても近道というのはないですが、「何カ月かかろうと、たとえ遠回りに見えても、ココルポートで地道に訓練を続けていけば、変化していく自分がわかる、目標が少しずつ見えてくる」、そういった自信はあります。マンガの中のセリフではありますが、「遠回りこそが実は一番の近道だった」という言葉が今も心の中に響いています。
特に夢というほどではないですが、自分のできること、持っている全てで、どうにか誰かを支えられたらいいなと思っています。あきらめやすく怒りやすかった私ですが、同じようにあきらめやすい誰かの気持ちを少しでも変えるような進言ができたなら、嬉しいです。
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